無教養おじさんが読書して勉強するブログ

大学を卒業してから十数年、まともに本も読んでいませんでした。

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件/楠木 建

企業の事業戦略について、競合他社と優位をもたらす論理を解説した本です。

筆者は学者という立場から、一歩引いた視点で分析されています。

ビジネス書なんぞは一度か二度しか読んだ記憶のない私ですが、超面白かったです。

 

 

 

【概要】

利益をもたらすために(企業活動で一番大切な目的)、どのような戦略をとるのか。

まず、「誰」に「どのような価値」を提供するのか明確にするべき。

 

また、一見すると非合理な打ち手は、他社に模倣されなので強い。

 

【感想】

最初は、あまりのページ数の多さに圧倒されましたが、

とてもわかりやすくて、スラスラと読み進めることができました。

 

何より、アマゾンやスターバックスなどがの馴染みのある企業が、

どのような着眼点を持って、どのような戦略で儲けているのかの解説が、

とてもワクワクします。

 

とはいえ、仕事でこれを応用するのは、ふか~い人間観察と思考の上で、

関係各所と調整をする必要があり、即座の実践は難しそうです。

(特に自分のような、末端の窓際社員には)

 

あくまで今後の展望ですが、副収入を得る際に、うまいことやるネタにしたいっすね・・・

(軽薄で申し訳ないです)

 

 

【要約メモ】

1、戦略としてのストーリーの重要性

日本企業は、営業や財務等の機能分化でなく、

外部に提供する製品やサービスで自分の仕事を定義する、

価値分化の価値観で働く人々や企業が多い。

 

・よって、戦略としてのストーリーが共有されていることで、

全体の士気が上がることも期待できる。

 

 

2、戦略とは

(1)定義 

競争戦略とは全社戦略ではない。事業戦略である。

そして、企業は利益を目標とすべき。

 

(2)重要性
競争が激しい業界で、利益の厳選となるのは戦略である。


(3)SPとOCの戦略論

・業界によるポジショニングがSPの戦略論

競争の回避とトレードオフ=選択と集中、「程度問題の違い」は戦略でない)

・組織能力を重視するのが、OCの戦略論

(組織特殊性を満たすもの、模倣しづらいルーティン)。

 

3、ストーリーの「結」ー利益ー

・結=目的は利益創出

・利益は売上-コスト。

利益創出の源泉を、売上の向上(顧客に提供する価値の向上)に置くか?

低コストを目指すか?

・ストーリーの構成要素がそれぞれ、強く(因果関係が強い)、太く(つながりが多く)、

長い(循環し、将来拡張性がある)ことが重要。
・ストーリーは進化していくもの

 

4、ストーリーの「起」 コンセプト=顧客価値の定義

(1)定義

「誰」を顧客とするか?「何の価値」を提供するか?

ストーリーの起点となる要素である。

 

(2)何の価値を提供するか

・例えば、昔のデパートは「家族で半日楽しめる行楽地」、

現在のコンビニは「自分の部屋の延長」、

サウスウエスト航空は「空飛ぶバス」、

スターバックスは「第三の場所」。

 

(3)誰を顧客とするか

・誰に嫌われるか=コンセプトに合わない客は誰か?をハッキリする。

例えば、カーブスなら男性、スタバなら忙しいビジネスマン。

だからこそ、コンセプトに「最高の」とか、肯定的な言葉は使わない。

 

・普通の人間の本性(感情)をよく考えることが大事。

顧客にアンケートをとっても、顧客が喜ぶことはわからない。

 

5、ストーリーの「転」 一見して非合理な打ち手は強い

(1)強いクリティカルコア=キラーパスとは

他の打ち手と多くのつながりを持ち(一石何鳥にもなる)、かつ、一見すると非合理なもの。

全体のストーリーを理解しない後発組が、キラーパスのみ取り入れず、

不完全に戦略を模倣して、自滅してくれることが多い。

逆に、合理的な打ち手は、競争相手に模倣されてしまう。

 

・例えば、スタバでいえば、直営方式がクリティカルパス

一見するとリスキーだが、直営社員は回転率にこだわらないので、

落ち着いた場所を作るのに役立つ。また、近隣に同じスタバがあっても怒らない。

 

マブチモーターキラーパスはモーターの標準化。(当時は個別仕様品だった)

規模の経済と稼働の平準化により低コスト化に成功した。

 

デルのキラーパスは、自社工場での組み立て。

これにより、直販で受注生産しても早い納品が可能となった。

 

サウスウエスト航空キラーパスは、ハブ空港を使わないこと。

 

アマゾンのキラーパスは、自前の巨大な物流センター。

在庫があることにより、幅広いセレクションと、即座の入手を顧客に与えた。

 

なお、「先見の明」を意識すると、外部環境の先取りを前提とするので、博打となりがち。

また、後発組に真似されやすい欠点もある。

 

6、事例研究 ガリバーの戦略ストーリー

ガリバーのシュート(結)は低コスト。

コンセプト(起)クリティカルパス(転)は買取専門(大きな利益を得られる小売を捨てた)。

コストとリスクが減り、素人のフランチャイズも使える。そうすると規模の経済が効いてくる。

 

本部一括査定もキラーパスとなる。

 

・また、戦略はこれまでの自社ストーリーとの整合性を検討すること。

ガリバーのドルフィネットは、規定期間が過ぎれば外部オークションに出し、画像販売しかしない。

 

 

7、戦略ストーリーの骨法
(1)「結」と「起」
・競争優位の源泉は、顧客への価値を上げるか、低コストにするか?
・優れたコンセプトの構想には、ターゲット顧客を細部までリアルに想像すること。


(2)普通の人々の本性を直視すること
コンセプトの構想には、誰をどのように喜ばせるのか明確にすること。
言われたら確実にそそられるが、言われるまでは誰も気づかないのが、優れたコンセプト。

(3)悲観主義で論理を詰める
希望的観測と、「本当にそうなる」を区別する。

(4)物事が起こる順序にこだわる

 

(5)過去から未来を連想する
未来の打ち手は過去の戦略の延長上にあること。
また、戦略は窮屈なくらいでちょうどよい、十年以上の長いストーリーを目指すこと。

(6)失敗を避けようとしない
・戦略ストーリーを全員で共有する。
・失敗をきちんと定義しておく→「早く」「小さく」「はっきりと」

(7)賢者の盲点をつく
・合理性では先行できない。一見非合理だが、戦略全体では合理的に働く打ち手を考える。
・業界の常識を疑ってみる。日常の生活や仕事で直面する不便や疑問に、「なぜ」と考える。

そのストックを蓄積する。
・最新のベストプラクティスを調査するという姿勢は、常識が強化されるだけで役に立たない。

(8)競合他社に対してはオープンに構える
戦略ストーリー全体は容易に真似できないもの。
そうすれば一部の打ち手だけ真似されても、相手は自滅するだけで怖くない

(9)抽象化で物事の本質を掴む
・過去のストーリーを読み解き、背後の論理を読解する。新聞や雑誌は断片的な情報が多い。経営者の自伝や評伝がおすすめ。
・他社の戦略ストーリーの論理を抽象化してはじめて、汎用的な知識となり、自社に水平展開が可能となる。
・例えば、トヨタのTPSは時間に基づく競争優位、ガリバーは後出しジャンケン(不確実な小売はやめて、相場がわかるオークションに機械的に出品)、ザラとセブンイレブンは自動追尾型ミサイル(消費者の嗜好を読んでから、生産や発注する)

(10)思わず人に話したくなる話をする
・ビジネスは総力戦。自分の働きが全体にどのような影響を与えるかを、全員に理解させること。
インセンティブや評価で仕事をさせると、個人合理性で動き、暗くなりがち。
・ストーリーは対面で理解させるのが基本
それには、自分で面白いと思えるストーリーを作らなければならない

一番大事なのは、自分以外の誰かのためにならないと、モチベーションが長続きしない。
他人のためになることが、一番自分のためになる。

 

 

以上